親の通院や手続きが重なり、有給休暇だけでは足りないと感じたら、勤務先で使える介護の制度を確認します。上司や人事に「家族の介護に直面したので、使える制度の説明を聞きたい」と伝えるところから始められます。
先に決めなくていいこと
仕事を辞めるかどうかは、今週決めない。介護の全体量がまだ見えていない段階の退職は、収入と社会保険と再就職の三つを同時に動かす大きな決断で、判断材料がそろっていない。
93日をどう使うかが決まっていなくても、相談は始められます。すでに休む必要がある日や退院予定が分かっているなら、その日程も伝えてください。介護保険の認定結果を待つことを、勤務先への相談の条件にしないようにしましょう。
伝える先と伝えること
伝える相手は、直属の上司か人事の担当部署のどちらか話しやすいほうでよい。伝える内容は一文で足りる。「家族の介護に直面したので、使える制度の説明を聞きたい」。親の病状の詳細や、休む日数の見込みまで用意する必要はない。
2025年4月からは、介護に直面した旨を申し出た労働者に対して、会社が介護休業などの制度を個別に知らせ、取得の意向を確認することが義務になっている(2026年度現在)。つまり、最初の一言さえ出せば、制度の説明は会社側の仕事として始まる。言い出す側が制度に詳しくなってからでないと話せない、という順番ではない。
制度の骨子 — 93日・3回・給付金(2026年度)
2026年度時点の骨組みは次のとおりである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割できる |
| 対象家族 | 配偶者(事実婚を含む)・父母・子・祖父母・兄弟姉妹・孫・配偶者の父母 |
| 申出 | 休業開始予定日の2週間前までに書面などで会社へ |
| 介護休業給付金 | 雇用保険の被保険者が要件を満たすと、休業開始時賃金日額の67%相当額。申請先はハローワーク |
| 介護休暇 | 年5日(対象家族2人以上は10日)。時間単位の取得もできる |
対象となる「要介護状態」は、負傷・疾病・障害により2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態を指し、介護保険の要介護認定とは別の物差しである。このほか、残業の免除や短時間勤務などの措置、家族を介護する労働者がテレワークを選べるようにする努力義務(2025年4月〜)も定められている。細かな要件は勤務先の規定と厚生労働省の特設サイトで確認する。
93日の使いどころ — 体制づくりに充てる
93日は、家族が自分の手で介護をやり切るための日数として設計されていない。厚生労働省も、両立のポイントとして、介護保険サービスを利用して自分で介護をしすぎないこと、申請を早めに行い認定前から調整を始めること、ケアマネジャーに何でも相談することを挙げている。
だから休業の使いどころは、入院先との面談、要介護認定の手続き、サービスや施設の検討、ケアマネジャー探しといった「体制が立ち上がるまでの集中期間」に置くと働きやすい。毎日の介護そのものは制度とプロに割り振り、休業はその手配に使う。この割り振りを家族内でどう分けるかはきょうだい分担の話し合いで扱う。
言い出すときに詰まりやすい場面
「迷惑をかけるかもしれない」と言い出しにくいこともあります。予定がすべて決まるまで待たず、分かっている日程と、まだ見通せないことを分けて伝えてみましょう。勤務の調整についても相談しやすくなります。
上司が制度をよく知らない場合もある。そのときは人事や総務に相手を替えてよい。社内に相談先が見つからない、申出が扱われないといった場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が外の相談先になる。一人で交渉を抱え込まない。
今週やらないことを一つ決める
最初の相談で、93日分の使い方を完成させる必要はありません。休業と休暇の違い、申出の期限、自分が使える制度を確認し、必要な日程を勤務先と相談します。説明を受けた内容と次の手続きをメモに残しておきましょう。
伝えたあとの次の一歩は、親側の体制づくりに戻る。まだなら地域包括支援センターへの相談から順路が続く。



